αのPVができるまで

こんにちわ。「スーパーロボット大戦W」の作業に明け暮れる嶋崎です。脳が煮詰まってきたので、早速、第2回目の投稿です。寺田さんからもご紹介頂きましたので、今回はせっかくですから「スーパーロボット大戦α」の当時のエピソードをご紹介しましょう。読みたい人だけ読んでね。


「スーパーロボット大戦α」は2000年5月末の発売ですから、確か作業が始まったのは1999年の春だったと思います。手元に届いたVHSを早速視聴すると、コロニーを見上げるR-1。ピアノにのせた女性のボーカル。モノクロームで描かれる一年戦争の歴史。R-1、サイバスターとのランデブー。一条の閃光が地球を撃つ。SDながらもそれぞれのロボットの個性を良く捉えたカットの数々…。思わずグッと引きつけられました。

私自身はアニメブームの第一世代?に属していますので正直な話、SD耐性があまりないというか。どちらかと言えば、SD表現に「おこちゃま向け」の印象を持っていたのですが(スパロボはプレイしていた癖にね)、このαムービーには魂鷲掴みにされました。”SDだけど格好良いじゃない!”という感覚が新鮮でしたね。こりゃ、肝を据えて取りかからないとな…と。

自分と同様に「SD=おこちゃま」と思いこんでいる食わず嫌いのお客さん達に向けて、「大人も楽しめる娯楽なんですよ」って表現できないのかな?と思ったんですね。

ユーザーの皆さんも経験あるかと思うんですが、スパロボの魅力を伝えるって凄く大変で。色んなロボットが一つの世界観に結集してるんだよ?な~んて迂闊に言っちゃうと、「けしからん!」なんて生真面目な純血派は全力で怒り出したりしますでしょ?(笑)

SDという表現上のフィルターをかけることで、作品の本質がより鮮明に描けてくる部分がある。そのコトに気がつけるって”実は”大人っぽかったりするんだけれど、なかなかそうした感覚までは伝えずらいところがあって。

当時、メーカーの制作する店頭PVと言えば大抵が新機能の説明に特化したようなもので、言ってしまうと「説明ビデオ」。ただただナレーションで新機能紹介していく感じだったのですが、「α」では、(当時としては)一歩先の表現が出来ないかと模索しました。もっとこうワクワクしてくるような高揚感を詰め込めないのかな?と。幸いにも素晴らしいサウンドトラックに恵まれ、音楽性を重視した現在のスパロボPVに繋がる構成が自然と形作られていきました。

当時はまだノンリニア編集の過渡期でパソコンのマシンパワーも映像を扱うには全然足りなかったので、作業は想像以上に困難で。わざわざ特別な機材を借りるために長野にある編集施設にまで出かけて、寺田さんにも完成したばかりのCG映像を届けて頂いたりして、その節は本当にご苦労様でした(お辞儀)。わざわざいらして頂いたのに、僕らスタッフは食事に出ていて不在。戻ってみると「寺田です…。」みたいな寂し~い書き置きとデータCDのみが置かれていて。大慌てで寺田さんの車を追いかけて長野の山中でカーチェイスを繰り広げてみたり(笑)…いやはや懐かしい。

印象深いのは「SRXの合体ムービー」ですね。寺田さんご自身はあまり記憶にないかもしれませんけど。SRXの合体ムービーって凄~く長いんですよね。正味7分のPVの中に入れるには当然かなり端折る必要があるんですが、これがどうやっても縮まらない。仕方なく倍速をかけた状態でオフライン試写したんですが、見るなり「こりゃ~、SRXじゃありませんね!」と一喝。

確かにただ早回しした感じは否めない。編集作業の担当者(エディターと呼びます)が「わかんねっす…」と根を上げまして。なるほどならば俺がやってやるぜ!…と、近所のツタヤから大量のロボアニメを借りてきて、あらためてオープニングと合体・出撃パートを延々と視聴して研究。

編集というのはリズムでやるものなので、ロボアニメ独特のテンポ感を徹底的に叩き込み直して再挑戦ですわ。結局、1フレーム単位の編集作業で調整しなおして遂に完成。正直死ぬかと思いましたけど(笑)。男にはね、無駄と分かっていても、やらねばならない時があるんですよ?

寺田さんの記事にもゲームの戦闘シーンが20秒しかなかったとある通りで、あらためて当時のPVを見直してみると、戦闘シーンなんてマクロス主砲発射、Vガンダム、ゼータガンダム、「しか」無いんですね。しかも目玉ついてるじゃん!!なんてレアなんでしょう…。うわっ、カットイン紹介全部静止画じゃん!!とか、色々発見があります。

お台場での発表イベントも懐かしいなぁ。観客のみんなが一番反応したのは「ヴィレッタ=バディム」の静止画(爆笑)。生涯忘れられねー。「α」は色々思い出が詰まった仕事でした。